ハイビームで走ることで夜間の交通事故が減るって本当?

ヘッドランプをつけて走る車最近では、夜間走行中に積極的にハイビームを使用することが推奨されています。

車はハイビームで走ることが基本であり、ロービームで走ることは危険だというのです。

確かにハイビームにすることによって遠くまで照らすことが可能になり、歩行者などを発見しやすくはなります。

しかしその一方で、ハイビームを多用することはむしろ危険であるという声も多いのです。

実際に対向車のハイビームによって、目がくらんで何も見えなくなってしまったという経験をしたことのあるドライバーも少なくないことでしょう。

はたして、ハイビームを使って走ることで交通事故が減るというのは本当なのでしょうか?

なぜロービームは危険だといわれるのか?

ドライバーの中には、ロービームを使って走るのがあたり前になっていて、過去に一度もハイビームを使ったことがないという人もいることでしょう。

そのため、ハイビームとロービームの照射距離にどれくらいの違いがあるのかということが、あまりイメージできない人も多いと思います。

ロービームにした場合の照射距離は、約40mとされています。

40mというとずいぶん先まで照らしているようなイメージがあると思いますが、ある速度以上で走っている車にとって、十分に安全を確保できる距離とはいいがたいようです。

時速60kmで走行している車の停止距離が約40mといわれています。

ただ、実際に時速60kmで走っている車が障害物に気がついてから40mで止まれるわけではありません。

障害物に気がついてから、ブレーキを踏むまでの空走距離が17mほどあるといわれています。

つまり、この空走距離と制動距離を合わせた57mが、時速60kmで走っている車が停車するこができる距離ということになるわけです。

その結果、ロービームにしたままの状態で時速60kmで走っていると、40m先の障害物に気がついても止まることができないという結論になります。

それに対してハイビームであれば、照射距離が100mとなりますので、時速60kmで走っている車が障害物に気がついた場合に余裕を持って止まることが出来るというわけです。

こういった理由から、ハイビームを積極的に使用することで交通事故が減るといわれているわけです。

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対向車や後続車のハイビームで目がくらんでしまう

ライトを照らして走る車確かにハイビームにすることで、照射距離が伸びて障害物を早めに発見することは可能になります。

しかし、実際に経験された方も多いと思いますが、前方からハイビームのままの車が走ってくると目がくらんで何も見えなくなってしまうことがあります。

まともにハイビームの光を目に受けてしまうと、自分がどこを走っているか分からなくなってパニックに陥ってしまうこともあります。

経験された方は分かると思いますが、本当にこれは危険です。

また、後方から来る車がハイビームのままだった場合にも、ミラーに反射したライトの光で目がくらんでしまいます。

実際に、先行車がいるにもかかわらずずっとハイビームにしたままの状態で車を走らせていた大学院生が、怒り狂った先行車のドライバーに窓ガラスをたたき割られるという事件も起きています。

それほど、ハイビームというのは対向車や先行車にとっては、迷惑きわまりない行為となってしまうわけです。

対向車にパッシングされる程度で済めばいいですが、この大学院生のようにトラブルに巻き込まれる可能性も十分にあるわけです。

また、ハイビームによって目がくらんで危険な思いをするのは、対向車や先行車ばかりではありません。

実は、自転車に乗っている人や歩行者も、ハイビームに照らされて目がくらんでしまうことが多いのです。

特に自転車に乗っている人にとっては、ハイビームの車が前方から走ってくると、非常に恐怖を感じるに違いありません。

市街地ではロービームが基本

ヘッドランプ点灯の白い車確かに、車の制動距離などを考えたら、積極的にハイビームを使用すべきという考え方も間違いではありません。

だからとって、節操なくハイビームを使用することは、むしろ危険であるということもしっかりと認識しておく必要があります。

道路交通法第52条第2項には「夜間に他車両と行き違うときや前走車の直後を走る場合には、ヘッドライトの消灯あるいは減光する等灯火を操作しなければならない」と書かれています。

つまり、対向車が来た場合や先行車がいる場合には、ロービームを使用しなければならないとはっきり定められているわけです。

このことから、法的にも「基本はハイビームであり、対向車や先行車がいるときだけロービームにする」という考え方は間違いではないといえます。

ただし、車の台数そのものが少なく、滅多に対向車とすれ違うことがなかった時代ならばいざ知らず、現代の市街地などではむしろ周囲に車がまったくいない状況の方が少ないでしょう。

そのため、ハイビームが基本とは言っても、実際に市街地でハイビームを使うことのできる場面は滅多になく、ロービームで走り続けることが多くなるのは仕方のないところです。

また、市街地であれば街灯や建物などの明かりによって、ある程度の明るさが確保されていますので、40mより先がまったく見えないという状況はまずないといえます。

そういった理由から、市街地においては「ハイビームが基本」ではなく「ロービームが基本」とならざるを得ないわけです。

市街地をハイビームで走られたら、それは迷惑行為以外の何物でもありません。

参考記事:ライトをずっと下向きにしたまま走ると反則金6000円?~本当は上向きが基本らしい

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ハイビームが基本といわれる本当の意味

市街地をロービームで走ることに慣れてしまったドライバーは、どんな道であってもロービームのまま走るのがあたり前になってしまいます。

実際に、ハイビームをこれまで一度も使ったことがないというドライバーが存在するのは、そういった理由からだと思います。

しかし、本当にハイビームが必要な場面では、ロービームのままでは非常に危険であるということがいえます。

たとえば、街灯や建物の明かりがまったくない地方の山道などを走る場合です。

そういった道路をロービームのままで走っていると、まさに40mより先は真っ暗闇で、路肩や横断歩道を歩いている歩行者に気がつくのが遅れてしまう可能性は十分にあります。

こういった道路を走るときには、まさに「ハイビームが基本」でなくてはなりません。

もちろん、前方に先行車がいる場合や、対向車が来たときにはロービームにすることは必須です。

このように、最近さかんに言われるようになった「ハイビームが基本」という言葉の本当の意味は、どんな道路を走っていてもロービームにしか使わない人に対して「ハイビームを使うべき場所では積極的に使うようにしましょう」ということなのです。

そういった本当の意味を理解しないで、他人の迷惑もかえりみずにハイビームを多用するドライバーが増えてしまったことで、逆に危険な場面を作り出してしまったり、ドライバー同士のトラブルに発展する事例などが増えてしまっているのは残念であるといわざるを得ません。

文・山沢 達也

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