ハイブリッド車のバッテリーはどのくらいの寿命があるか?~劣化したときのメーカー保証や交換の費用

プリウス後部とエンジンバッテリーシステム最近は、燃費のいいハイブリッド車が人気になっています。

クルマの維持費のなかでも特に大きなウエイトをしめる燃料代を大幅に節約できるというのは、ハイブリッド車の大きなメリットです。

しかし、ハイブリッド車でひとつだけ引っかかることがあります。

それは、駆動用バッテリーの寿命です。

最近の国産車のエンジンは、耐久性が非常に向上しており、20万kmや30万kmは普通に走れてしまいます。

参考:タクシー専門の買取り店では走行距離50万kmでも買取りが可能!?
  
しかし、エンジンの耐久性が十分であったとしても、バッテリーがすぐにダメになってしまったのでは意味がありません。

スマホなどのバッテリーも、2年~3年使用していると性能が劣化してくることが多いものです。

ハイブリッド車に使われているバッテリーにも寿命があることは間違いありませんが、はたしてどれくらいの期間使用することができるのでしょうか?

また、交換が必要になったときの費用やメーカー保証はどのようになっているのでしょうか?

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ハイブリッド車にはスマホよりも性能が低いバッテリーが使われている?

バッテリーというとスマホなどの携帯電話を思い浮かべる人も多いと思いますが、携帯電話の場合には2~3年でバッテリーがダメになってしまうことが少なくありません。

最近のスマホにはリチウムイオン電池というものが使われていますが、この電池は約500回の充電と放電を繰り返すと、新品時の50%~70%にまで能力が落ちてしまうといわれています。

500回ということは、毎日充電をしていた場合には2年弱でその回数に達することになります。

スマホなどに使われているバッテリーの寿命が意外に早いということを、私たちは経験的に知っています。

そういった経験から、「ハイブリッド車の駆動用バッテリーは大丈夫なの?」といった素朴な疑問を誰もが抱くと思います。

しかも、ハイブリッド車の駆動用バッテリーには、リチウム電池よりも性能の劣るニッケル水素充電池が使われていたりします。

ハイブリッド車を代表するプリウスも、初代~3代目まではずっとニッケル水素電池を使っており、2015年に発売が開始された4代目になってやっとリチウムイオン電池が使われるようになりました。

アクアは、現在もずっとニッケル水素電池を使い続けています。


リチウムイオン電池には高価で発火の危険などもあることから、メーカーはこれまでハイブリッド車への使用に対して慎重になっていたようです。

リチウムイオン電池を使っているスマホのバッテリーが2年~3年でダメになってしまうのに、ニッケル水素電池を使っているアクアや4代目までのプリウスのバッテリーがどれくらい持つのか不安になる人もいるかも知れません。

しかし、結論からいってしまえば、まったく問題はないのです。

ハイブリッド車の駆動用バッテリーは、たとえニッケル水素電池を使っていたとしても、10年程度はまったく問題なくつかえます。

なぜスマホのバッテリーよりも圧倒的に寿命が長いのか?

ハイブリッド車は、スマホよりも性能の低いニッケル水素を使用していたとしても、スマホにくらべて圧倒的にバッテリーの寿命が長いのはなぜでしょうか?

実は、ハイブリッド車というのは、バッテリーの寿命が長くなるように、充電や放電をコンピュータによって制御しているのです。

その点が、スマホなどとは大きく異なります。

バッテリーには「メモリー効果」というものがあり、完全に放電する前に充電を繰り返すと、見かけ上の使用可能容量が徐々に減少していってしまいます。

とくにニッケル水素電池のメモリー効果は顕著で、ガラケー時代に「バッテリーは使い切ってから充電したほうがいい」といわれていたのを記憶している人も多いことでしょう。

短時間になんども充放電を繰り返すハイブリッド車の場合、むしろメモリー効果によってバッテリーの寿命が短くなるような気がしますが、そうではないのです。

30%~40%という狭い範囲での充放電を繰り返すことで、むしろメモリー効果は起きにくくなるのです。


ハイブリッド車は、充電率が30%~40%の範囲におさまるように、常にコントロールすることでバッテリーの寿命をのばしているのです。

また、ニッケル水素電池は充電時に60度C以上まで温度が上昇しますが、それを繰り返すことでどうしても劣化をしてしまいます。

そこで、ハイブリッド車では冷却ファンを設置してバッテリーの温度が45度C以上に上昇しないようにコントロールしているのです。

このように、ハイブリッド車の駆動用バッテリーはコンピュータによって高度な制御をすることによって、スマホなどとはくらべものにならないほどの長寿命を可能にしているわけです。

参考:ハイブリッドカー駆動用バッテリーのメモリー効果と制御

メーカー保証は5年あるいは走行距離10万km

プリウスとバッテリーのイラストハイブリッドカーのバッテリーが、スマホなどにくらべて圧倒的に長寿命であることは、メーカーの保証からもうかがえます。

たとえばプリウスの場合、駆動用バッテリーのメーカー保証は「新車登録から5年以内、もしくは走行距離が10万km」となっています。

参考:トヨタメーカー保証

すぐに使えなくなるどころか、天下のトヨタ自動車が5年間あるいは10万kmまでは大丈夫であると保証をしてくれているわけです。

こういった保証をつけておきながらスマホのように2年~3年でバッテリーがダメになってしまったとしたら、メーカーは大きな損失を生むことになってしまいます。

ですから、よほど「はずれ」のバッテリーでなければ、保証期間内に寿命が来ることはまずないと考えていいと思います。

メーカー保証の期間や走行距離というのはかなり余裕を持たせて設定されていることが多いので、実際にはその2倍程度の10年あるいは20万km程度は問題なく使えるはずです。

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駆動用バッテリーを交換しないでどれくらいの距離を走ることが可能か?

地図の上に乗っている白色のミニカーハイブリッド車の駆動用バッテリーに関しては、新車登録から5年以内あるいは走行距離10万kmがメーカー保証となっていますが、実際にはどれくらい走ることができるのでしょうか?

これは、実際にハイブリッド車のバッテリーを交換したことのある人に聞いて見るのが確実です。

ニッケル水素電池を使用している3代目プリウスの駆動用バッテリーを交換したことのある人に聞いてみますと、交換時の走行距離は18万km~25万kmの範囲であることが多いようです。

ハイブリッドカーのパイオニアともいうべき初代プリウスの場合には、当時のバッテリーの性能が低かったことやコンピュータ制御が未熟だったこともあり、7万km~10万kmで交換するケースも多かったようです。

しかし、最近のハイブリッドカーに関しては、メーカー保証の2倍程度である20万kmというのが、実質的な駆動用バッテリーの寿命と考えていいと思います。

実際に、オークションに出品された中古のハイブリッド車1500台のバッテリー寿命を調査したところ、20万km以下の走行距離でバッテリーの寿命を知らせる警告灯がついている車両はほとんどなかったそうです。

参考:ハイブリッド車のバッテリー寿命を1500のデータより測定してみた

マイカー用途のクルマを走行距離が20万kmを超えるまでずっと乗り続けるという人はそれほど多くはないと思います。

そういった意味ではほぼクルマが寿命をむかえるまでは、ハイブリッド車の駆動用バッテリーの交換は必要ないということがいえそうです。

ただし、バッテリーというのは放置したままの状態だと自然放電してしまいますので、少しでも長持ちさせようと思うのであれば、定期的にクルマを走らせる必要があります。


引用元ページ

駆動用バッテリーが寿命となってもエンジンだけで走れるか?

ハイブリッド車には走行用のモーター以外にエンジンがついています。

駆動用バッテリーが寿命をむかえてしまっても、補機バッテリーでエンジンを始動することができれば、エンジンだけで走行できるのではないかと考える人もいるかも知れません。

しかし、残念ながらそれは不可能です。

なぜなら、ハイブリッド車というのは、駆動用バッテリーを使ってモーターを回すことによってエンジンを始動する仕組みになっているからです。

一般のクルマの場合は、ヘッドライトやウインカーを点滅させるための補機バッテリーでセルモーターを回してエンジンを始動させますが、そもそもプリウスなどのハイブリッド車には始動用のセルモーターがないのです。

つまり、駆動用バッテリーが寿命をむかえてしまうと、ハイブリッド車はエンジンを始動することができなくなってしまい、走行不可となってしまうことになります。

ただし、ある日突然にバッテリーが寿命をむかえてクルマが走らなくなるというとではありません。

ハイブリッド車の駆動用バッテリーが劣化をしてくると、燃費が極端に悪くなるとか、充電や放電を頻繁に繰り返す、あるいはEV走行(モーターだけで走行)できる距離が短くなるなどの前兆があらわれます。

そういった症状がまったく出ていないのであれば、当分の間は問題なく使用できると考えていいでしょう。

そして、いよいよ駆動用バッテリーが寿命をむかえる直前になると、「ピィ~」という警告音とともに、メーターパネル内に「ハイブリッドシステムチェック」という警告がでることになります。

こういう状態になったら、さすがにバッテリーの交換をする必要があるでしょう。

ハイブリッド車のバッテリーの交換費用はどれくらい?

もし駆動用のバッテリー交換が必要になった場合は、どれくらいの費用がかかるのでしょうか?

実際にハイブリッド車の駆動用バッテリーを交換したことのある人自体がそれほど存在しないために、さまざまな噂が流れていたりします。

特に初代プリウスのバッテリー交換費用がおよそ70万円と高額だったために、いまでもハイブリッド車のバッテリー交換には多額の費用がかかると思い込んでいる人が多いようです。

しかし、当時にくらべてバッテリーの値段は大きく下がっており、あの頃のように驚くような金額にはなりません。

3代目プリウスの場合、駆動用バッテリー交換の費用は、工賃込み17万円程度で済むようです。

もちろん、17万円という出費も、基本的には20万km程度を走行した人だけが対象になると考えられますから、一般的な走行距離内で使用している人にとっては、交換費用はあまり気にする必要はないといえそうです。

ハイブリッド車はエンジンの寿命が短くなるのか?

ハイブリッド車というのは、エンジンのオンオフを頻繁に繰り返します。

エンジンというのは、頻繁にスタートしたり停止したりを繰り返すよりも、ずっとかけっぱなしにした方が長持ちするといわれます。

エンジンをかけっぱなしで長時間走行する長距離トラックなどは、普通に100万kmほど走ってしまいます。

関連記事:年間に10万km以上走る長距離トラックの寿命は?~100万kmでも問題なく走ります

それにくらべて、近所への買い物などにしか使用しないクルマは、エンジンを頻繁にスタートさせたり停止させたりを繰り返すので寿命が短くなるといわれています。

この理屈からいえば、頻繁に始動と停止を繰り返すハイブリッド車のエンジンの寿命は、短いことになってしまいます。

しかし、この点に関してはそれほど心配する必要はありません。

結論からいってしまえば、ハイブリッド車のエンジンの寿命は一般のクルマとそれほど変わらないと考えていいと思います。

なぜなら、エンジンの寿命に影響をあたえるのは、あくまでもコールドスタートを頻繁に繰り返すような乗り方をするときだからです。

コールドスタートというのは、文字通りエンジンが冷えている状態でスタートさせることです。

エンジンが冷えている状態だと、シリンダー内部の潤滑油がオイルパンに落ちてしまっています。

オイルが十分にまわっていない状態からエンジンを回転させるわけですから、エンジン内部の摩耗が発生しやすくなってしまうのです。

コールドスタートのことを、ドライスタートなどと呼ぶことがあるのは、そういった理由があるからです。

しかし、ハイブリッド車が走行しているときにはエンジンは暖まっていますし、シリンダー内部に十分なオイルがまわっている状態です。

そういった状態であれば、オンオフを頻繁に繰り返しても、エンジンの寿命に大きく影響するということはないのです。

ですから、エンジンのオンオフを頻繁に繰り返すハイブリッド車であっても、エンジンの寿命が特に短くなることはないと考えていいと思います。

文・山沢 達也

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