セリカ1600GT~2T-G型エンジンを積む鮮烈スタイルの日本初スペシャルティーカー

セリカ1600GT1970年に、日本で初めてスペシャルティーカーと呼ばれるクルマが登場しました。

それが、トヨタのセリカと呼ばれるクルマです。

そのセリカの鮮烈なスタイリングに、当時のクルマファンは度肝を抜かれました。

セリカはスタイリングだけではなく、速さも兼ね備えているクルマでした。

特に、2T-G型と呼ばれる1600ccのDOHCエンジンを積んだ「セリカ1600GT」の最高速度は190km/hに達し、スタートから400mまで到達するまでのタイムであるゼロヨンは16秒5をたたき出しました。

スカイラインやフェアレディZといった人気スポーツ車種を持っていた日産に対して、上級スポーツモデル市場で後れをとっていたトヨタが、一矢を報いることになったのがこのセリカ1600GTということになります。

また、セリカは日本で初めて「フルチョイスシステム」を採用することにより、世界に1台しかない自分好みのクルマを発注できるシステムになっていました。

日本で初めてスペシャルティーカーとして発売されたセリカ

1970年10月に登場したセリカは、日本に初めて登場したスペシャルティーカーといえます。

スペシャルティーカーというのは、スポーツカーのようなスタイリングや性能も持ちながら、快適性も重視したパーソナルカーのことをいいます。

このスペシャルティーカーというカテゴリーは、1950年代半ばにアメリカに登場しました。

代表的なクルマが、1955年に販売されたオープン2シーターの、フォード・サンダーバートで、若者を中心に爆発的な人気を得ていました。

また、1964年にデビューして大人気となったフォード・ムスタングも、スペシャルティーカーの代表的なクルマといえるもので、デビュー初年度で30万台を販売しています。

そうした流れを受けて、日本で初めて発売されたスペシャルティーカーが、トヨタのセリカといういことになります。

フルチョイスシステムにより自分だけのモデルに仕上げることができたセリカ

セリカのいろいろなパーツセリカは、1960年代にアメリカで大人気となっていたスペシャルティーカーであるフォード・ムスタングに採用されていた、フルチョイスシステムを日本で初めて採用することになります。

フルチョイスシステムというのは、まさにオーダーメイドのような感覚でさまざまなパーツを組み合わせて、自分の好みのクルマを発注することができるというものです。

エクステリアやインテリアだけではなく、エンジンやトランスミッションなども自分好みに組み合わせることが可能で、さらにオプションも加えると2000万通りの組み合わせが可能でした。

まさに、世界に1台しかない自分だけのクルマを発注することができたわけです。

このセリカのフルチョイスシステムには、「カーピューターシステム」と呼ばれる販売方法が採用されていました。

各ディーラーの端末と、トヨタ自動車販売のホストコンピューターをオンラインで結んで、仕様やボディカラー、オプションなどの項目と希望価格を入力すると、そのオーダーに対する回答をその場で表示するというものです。

インターネットが発達した現在であれば、特に驚くほどのシステムではありませんが、そもそも1970年当時はインターネットなどという概念がなく、コンピューター自体が非常にめずらしい存在でした。

セリカの「カーピューターシステム」が、いかに画期的な販売方法であったかが想像できるかと思います。

そんな画期的な「カーピューターシステム」を使ったセリカのフルチョイスシステムでしたが、実際にはそれをフルに活用するユーザーというのは少なかったようです。

ほとんどのユーザーは、ディーラーがおススメする仕様の組み合わせで購入していました。

そのため、年を経るごとにチョイスの選択肢が少なくなり、最終的には一般的なグレード構成に近くなってしまいました。

フォード・ムスタングで大成功したフルチョイスシステムですが、日本ではあまり受け入れられることはなかったようです。

名機2T-G型エンジンを始めて搭載したセリカ1600GT

1600GTに積まれていた2T-G型エンジンセリカには、1400cc~1600ccの数種類のエンジンが用意されていましたが、注目すべきは1600GTに積まれていた2T-G型エンジンです。

1600ccの直列4気筒DOHCエンジンにソレックスのツインキャブレターを組み合わせて、115psを発揮する高性能エンジンでした。

この2T-G型エンジンには、ヤマハ製のシリンダーヘッドが組み合わされていました。

もともと2T型と呼ばれるOHV式のエンジンに、高回転型エンジンの技術を持つヤマハが制作したDOHCのシリンダーヘッドを乗せたわけです。

ちなみに、トヨタ2000GTに積まれていたエンジンも、クラウン用のM6型直6エンジンにヤマハ製のDOHCシリンダーヘッドを乗せたものです。

実際に、この当時のトヨタ車のDOHCエンジンにはヤマハの音叉マークが入っていました。

そのため、トヨタのスポーツエンジンはヤマハ製であるといわれることが多かったのですが、実際にはエンジンすべてではなく、シリンダーヘッドがヤマハ製だったわけです。

そんなヤマハとの合作である高性能な2T-G型エンジンは、セリカ1600GTを皮切りに、カリーナやカローラレビン、スプリンタートレノといったホットなクルマに次々に採用されることになります。

この2T-G型エンジンを積んだ、カローラレビン(27レビン)やスプリンタートレノといったクルマは、いまでも熱狂的なファンに支持されています。

参考:2T-G型エンジンの詳細記事

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スタイリングや性能の高さの割に割安感があったトヨタ・セリカ

セリカ1600GTは、2T-G型エンジンを搭載して最高出力115ps発揮し、最高速度も当時のクルマとしてはトップクラスの190km/hマークする高性能車であるにもかかわらず、割安感のあるクルマでした。

セリカ1600GTの当時の販売価格は87万5千円となっていました。

1970年当時の大卒の初任給が4万円ほどでしたから、セリカ1600GTの価格を現在の物価に合わせると350万円ほどになります。

当時の大衆車であるカローラ1200DXの販売価格が50万円近くしましたから、セリカ1600GTの87万5千円という価格は非常にリーズナブルということが言えるわけです。

セリカは、同じタイミングで発表されたカリーナと共通の部品を使うことで、コストダウンを図っていたといわれています。

現在のクルマとくらべて非常にコンパクトだったセリカ

プリウスとセリカ1600GT現在のクルマは、当時のクルマとくらべるとどんどん大きくなっています。

トヨタの人気車種となっているプリウスのサイズは、全長4540mm、全幅1760mm、全高1470mmとなっています。

それに対して、セリカ1600GTのサイズは、全長4165mm、全幅1600mm、全高1310mmしかありません。

特に全幅に関しては1600mmしかありませんので、非常に狭い印象があります。

現在のクルマは、コンパクトカーであっても5ナンバー枠ギリギリの1.7m近くになっていることが多いものです。

現在トヨタから販売されているコンパクトカーであるヴィッツの全幅が1695mmですから、それとくらべてもセリカは95mmも狭いことになります。

また、車重もセリカ1600GTが940kgだったのに対して、ヴィッツの1000ccモデルの車重は970kgとなっています。

つまり、1600ccの高性能なエンジンを積むセリカは、現在の1000ccのクルマよりも軽かったということです。

1600ccのエンジンながら、最高速度190km/h、ゼロヨン加速16秒5という当時の日本のクルマとしはトップクラスの性能を発揮することができたのも、ボディの軽さを考えると当然といえそうです。

参考:セリカ1600GTの諸元表

文・山沢 達也

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