最近のタイヤの扁平率はなぜどんどん低くなっているのか?

青色のTOYOTAヴォクシー最近のクルマのタイヤを見ると、どんどん薄くて平べったくなっていることに気がつくと思います。

タイヤの幅に対して厚みを比率で表したものを扁平率といいますが、この扁平率がどんどん低くなっているのです。

一般の乗用車であるにもかかわらず、かつてのレーシングカーのような扁平率のタイヤを装着しているクルマも少なくありません。

いったい、なぜタイヤの扁平率はどんどん低くなってきたのでしょうか?

そもそもタイヤの扁平率って何?

タイヤの扁平率というのは、タイヤの幅に対してサイドウォールの高さの割合を示しています。

たとえば、幅が225mmのタイヤに対して、サイドウォールの高さが123.75mmだった場合、扁平率は55%ということになります。

タイヤのサイドウォールの部分に「225/55 R16」などといった数字が書かれていますが、この数字の225が幅を表し、55が扁平率を表していることになります。

このようなタイヤを俗に「ニーニーゴーのゴーゴー」などと言ったりします。

ちなみに「R」はラジアルタイヤであることを表し、16という数字はホイール径が16インチであることを表しています。

タイヤの幅が同じであれば、扁平率が低くなればなるほど、サイドウォールの高さが低くなっていくことになります。

同じ225mmの幅のタイヤであっても、扁平率が55%のときは123.75mmだった高さが、扁平率が40%になると、90mmになってしまうわけです。

計算は単純で扁平率が55%なら、タイヤの幅×0.55で計算できますし、扁平率が40%であればタイヤの幅×0.4となります。

ちなみに幅が225mmで扁平率が40%の場合には「ニーニーゴーのヨンマル」などといったりします。

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昔のクルマのタイヤは扁平率が高かった

黄色のカウンタック昔のクルマのタイヤには、扁平率の表記がありませんでした。

なぜなら、当時のタイヤの扁平率はすべて82%で統一されていたからです。

その後、スポーツカー向けのタイヤとして、扁平率70%のタイヤが登場したときに、初めてタイヤにそれが記載されるようになりました。

当時のタイヤは、このように扁平率が高かったのです。

スーパーカーブーム世代の人には懐かしい、ランボルギーニのカウンタックやミウラといったイタリア製のスーパーカーでさえ、扁平率が70%のタイヤを使用していました。

ところが、最近のクルマは、普通のおじさんが乗るセダンであっても扁平率が60%~65%くらいになっています。

ちょっとしたスポーツタイプのクルマであったり、エアロパーツでドレスアップしたような車の場合、扁平率が45%とか40%程度のタイヤを履いていたりします。

ちなみに、日本を代表するスポーツカーであるGT-Rのタイヤサイズを見てみますと、フロントタイヤが「255/40 R20」となっており、リヤタイヤが「285/35 R20」となっています。

注目すべきはリヤタイヤで、285という幅の広さもさることながら、扁平率はなんと35%です。

かつてのクルマでは考えられなかったような驚きの扁平率ですが、ただタイヤの幅そのものも広いので、サイドウォールの高さは99.8mmあります。

扁平率が低いから単純にサイドウォールの高さが低いタイヤというわけではなく、あくまでもタイヤの幅との掛け合わせで高さが決まってくるわけです。

なぜどんどん扁平率が低くなっているのか?

このように、昔のクルマのタイヤにくらべて、最近のクルマは扁平率がどんどん低くなっています。

いったい、なぜこのようにタイヤの扁平率がどんどん低くなってしまうのでしょうか?

確かに、コーナーリングにおける走行性能は格段に上がるに違いありません。

コーナーリング中のタイヤには、横方向に強烈なG(加速度)がかかることになります。

この横Gがかかったときに、タイヤの幅に対して縦の高さがある(扁平率が高い)タイヤというのは、どうしてもよじれてしまうのです。

コーナーリング中にタイヤがよじれたりたわんだりしてしまっては、どうしてもクルマの挙動は不安定になってしまいます。

それに対して、タイヤの幅に対して高さの低い、いわゆる平べったい形のタイヤであれば、どっしりとして横方向のGには強くなるわけです。

スポーツカーに装着されているタイヤの扁平率が高いのは、そういった理由があるからです。

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なぜミニバンやファミリーカーのタイヤまで低扁平率?

スポーツタイプのクルマに扁平率の低いタイヤがつけられているというのは、納得のできるところです。

スポーツカーにとってコーナーリング性能というのは重要ですから、扁平率の低いタイヤを履くのは必然ともいえるでしょう。

しかし、最近ではスポーツカーだけではなく、ミニバンやファミリーカーといった、コーナーリング性能をあまり重要視しないような車でさえ、扁平率の低いタイヤを装着するようになっています。

たとえば、代表的なミニバンであるヴォクシーのZSというグレードに標準装備されているタイヤのスペックは「205/55 R16」となっています。

扁平率55%というのは、ひとむかし前であれば、まさにスポーツタイプのクルマに装着されていたタイヤのスペックです。

ヴォクシースポーツタイプG'sこれがさらにヴォクシーのG’sと呼ばれるスポーツタイプのグレードになると「215/45 R18」という、どう考えてもミニバンらしからぬスペックのタイヤが標準で装着されています。

もちろん、ミニバンといえども、公道を安全に走るためにはコーナーリング性能を無視するわけにはいきませんが、ただ日常の利用目的を考えた場合、明らかにオーバースペックといってもいいでしょう。

実は、最近のクルマにこうした扁平率の低いタイヤが装着される背景には、コーナーリング性能の向上もさることながら、スタイリングのよさをアピールするという面が大きいのです。

扁平率の低いタイヤを装着することによって、サイドウォールの高さが低くなってしまうと、タイヤの直径も小さくなってしまいます。

そのため、低扁平率のタイヤを装着するためには、ホイールのサイズアップをする必要があるのです。

先ほどのヴォクシーの例で見てみますと、ZSのタイヤのスペックが「205/55 R16」であるのに対して、G’sの場合には「215/45 R18」となっています。

扁平率が55%のZSは、ホイールサイズが16インチですが、扁平率が45%のG’sは18インチとなっているのです。

実際にこの2つのクルマを横から見てみると分かりますが、ホイールサイズが大きい方が、明らかにかっこよく見えるのです。

ホイール径が大きくなることによって、タイヤの黒いゴムの部分が目立たなくなり、ホイールの美しさがより際立つことになるのです。

このように、走行性能にあまり重点を置いていないような車種にまで低扁平率のタイヤが装着されるようになった背景には、「かっこよく見えるから」という単純な理由があったわけです。

低扁平率化によるデメリットも当然あります

低扁平率のタイヤを装着することによって、コーナーリングの性能がアップしたり、スタイルが良くなるといったメリットがあることが分かりました。

しかし、タイヤの低扁平率化にはメリットばかりではなく、デメリットもあるのです。

一番のデメリットとしては、乗り心地が悪くなるということです。

単純に、中に空気がたっぷりと入った厚いタイヤと、空気の量が少ない薄いタイヤをイメージしてもらえば、どちらのタイヤで走った方が、乗り心地が良くなるかは考えるまでもないでしょう。

タイヤというのは、中に充填された空気で路面から伝わるショックを吸収しているわけですから、空気の量が少なくなれば乗り心地が悪くなるのは当然です。

また、扁平率が低いタイヤで走っていると、路面のわだちなどでハンドルを取られやすくなったりします。

これをワンダリング現象などと呼んだりします。

低扁平率のタイヤは、コーナーリング性能向上のためにタイヤが変形しにくくなっていますが、それがアダになってしまうわけです。

わだちなどの路面状況の急激な変化があっても、扁平率の高いタイヤであれば、ある程度タイヤが変形することでそういった路面の変化を吸収してしまいますが、低扁平率のタイヤですとそうした路面の変化による影響を吸収できずにダイレクトに受けてしまうことがあるのです。

ただし、最近ではサスペンションの性能なども向上しており、少なくともメーカーが標準で装着しているタイヤであれば、たとえ扁平率の低いタイヤであってもこうしたワンダリングの問題は起きにくくなっているようです。

しかし、もともと標準のタイヤではなく、あとから扁平率の低いタイヤに交換したような場合には、もともとのサスペンションの設定が異なりますので、影響が出やすいということになります。

文・山沢 達也

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