ディーラーが中古車販売に本腰を入れるようになった理由とは?

ディーラー店内かつて車業界は、新車を販売するメーカー系列のディーラーと、中古車販売店の間でしっかりと住み分けができていました。

しかし、近年はディーラーが中古車販売に本腰を入れ始めたことにより、着々と中古車の販売台数を伸ばしています。

実際、新車を販売する店舗の隣に中古車の展示場を併設するディーラーを見かける機会が多くなっています。

なぜ、新車販売のディーラーが中古車業界に殴り込みをかけてきたのでしょうか?

ここでは、その真相に迫って見たいと思います。

新車がかつてほど売れなくなってきた

車が黙っていても売れていた時代であれば、ディーラーはあえてリスクのある中古車販売に本格的に参入することはなかったと思います。

新車であれば、基本的に受注生産となりますので、在庫リスクというものがありません。

しかし、中古となれば確実に売れる車を見分ける目利きの力や相場を判断する力がなければ、在庫により利益を圧迫してしまうことになりかねません。

そういったリスクがあるにもかかわらず、ディーラーが中古車販売に本腰を入れ始めたという背景には、新車が売れなくなってきたという事実があるのです。

日本国内の新車が最も売れたのは、まさにバブル景気の影響を受けた1990年になります。

この年の新車の販売台数は、778万台です。

近年の新車販売台数が500万台程度ですから、ピーク時の3分の2程度まで落ち込んでしまっていることになります。

それでは、なぜ新車が売れなくなってしまったのでしょうか?

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昔にくらべて車が長持ちするようになった

新車がたくさん売れるためには、古い車が処分されることから生まれるニーズがなくてはいけません。

車がある年数を経て廃車となることで、市場から減った分の車を補うように新車が売れていくわけです。

しかし、幸か不幸か最近の車は品質が向上したおかげで、かつてにくらべて長持ちするようになってしまったのです。

関連記事:車の耐用年数と乗りつぶしや廃車にする時期をどう判断するか?

1976年当時の車の平均使用年数はおよそ7年でした。

あの当時の車は、塗装の技術が悪いせいで、5年も乗るとボディが腐食して穴があいてしまうようなことが頻繁にありました。

車の価値も、5年落ち以上になるとほとんど査定がつかないような状況でした。

そして、7年ほど乗るとほぼ廃車になるというのがほとんどの車の運命でした。

それに対して、最近の車は当時とくらべると驚くほど長持ちします。

2014年の普通車の平均使用年数は、およそ13年です。当時とくらべて2倍近く長持ちするようになったのです。

その結果、5年落ちどころか10年落ちでもしっかりと査定額を提示してもらえる車が多くなっています。

参考記事:13年落ち以上の車が50万円以上で売れた事例~廃車はもったいない

日本国内における車保有層の数が一定であると仮定すれば、車が長持ちすればするほど新車が売れなくなるということは容易に想像がつくと思います。

つまり、車の買い替えサイクルがどんどん長期化してしまっているわけです。

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車が若者の憧れの対象でなくなってきた

かつては、車を保有することは若者の憧れでした。

車が若者に人気があった時代は、スポーツタイプの車が飛ぶように売れました。

しかし、最近の若者は車に興味を示さない人が多くなっています。

今の若者が生まれた時代には、すでに車はどこの家庭にもあるありふれた存在となっていたために、憧れの対象になりにくいということがあるのかも知れません。

また、都会では交通網の発達もあり、車がなくても生活に不自由することがない地域も増えている点も車離れに拍車をかけているでしょう。

車を保有して維持していくためには、さまざまな経費がかかるため、その分のお金を車以外の別なものに使いたいという考え方の人も多くなっています。

かつては、車でドライブをするというのは若者にとってとても人気のある娯楽の一つでしたが、最近の若者は積極的に外に出ることを好まず、室内でゲームなどをして過ごすことが多くなっています。

このように、若者たちのライフスタイルや車に対する価値観の変化が、新車の販売台数を年々減らしてしまっている原因の一つとなっていることは間違いないでしょう。

参考:若者の車離れ…「買いたくない」が5割超え?

ディーラーはなぜ中古車販売に力を入れるのか?

中古自動車新車の販売台数が年々減ってきているという現実があるために、ディーラーは売上の落ち込みを防ぐために中古車販売に本格的に参入するようになったということは事実です。

しかし、実際にはそれだけで説明できるほどその動機は単純ではなさそうです。

それでは、他にどういった理由があるのでしょうか?

ディーラーは中古車販売に有利?

新車を売ることがメインのディーラーですが、実は中古車販売をするにあたっては圧倒的なアドバンテージがあるのです。

それは、新車を購入する人の多くは、それまで乗っていた車を下取り車としてディーラーに持ち込むからです。

オーナーから直接買い取った車を、自社で直接販売することができるために、オークションから車を仕入れている他の中古車販売店にくらべて非常に利益を出しやすいということが言えます。

最近では買取専門店が注目を浴びていますが、やはり新車を買う店でそのまま下取りに出した方が手続き的に楽なため、他のお店の買取価格と比較せずにそのままディーラーの言い値で車を手放す人が多いのです。

最近では買取専門店や車の一括査定サイトなどが増えてきたこともあり、ディーラーに下取りに出さない人は、複数の店舗を競争させて少しでも高く売ろうと考えます。

買取業者は、車を仕入れるためにはライバルに競り勝たなければ車を手に入れることができないために、ある程度自社の利益を削らざるを得ません。

そういった買取専門店の厳しい状況を考えた場合、どこの店とも比較することなく、下取り車として言い値で車を手に入れることのできるディーラーは、中古車販売においては圧倒的に有利であるということが理解できるかと思います。

中古車ならメーカーの顔色を伺わずに済む?

日本の新車ディーラーは、基本的にメーカーの傘下にあるということもあり、新車販売においてはディーラーが独自色をだすということは困難です。

つまり、メーカーがディーラーに対して力を持っており、その方針に背いて新車を販売するということは実質不可能なわけです。

しかし、中古車であれば別です。

メーカーの顔色を伺うことなく、自由に自社の独自色をだして車の販売をすることができます。

その結果、しばりのある新車にくらべて、やり方によっては中古車の方が大きく利益をだすことが可能だということに、ディーラー各社は気がついたわけです。

新車のディーラーが、中古車販売に本腰を入れるようになった背景には、このようなさまざまな要因があるわけです。

文・山沢 達也

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