悪質なあおり運転に関するさまざまな問題点を検証~どうすれば被害者にならずに済むか

後方の車が前車をあおるクルマのあおり運転が問題になっているようです。

あおり運転というのは、先行車に対して衝突の危険性があるほどに車間距離を詰めて道をゆずるように強要したり、パッシングやクラクションなどによって他のクルマを威嚇したりする行為のことを言います。

そういったあおり運転をする人の理由はさまざまです。

割り込まれたとか、道を譲ってあげたのに挨拶がないとか、走るスピードが遅すぎるなどといったことが主な理由になっているようです。

クルマに乗ると性格が豹変してしまう人が少なくないといわれていますが、車内という閉鎖された空間の中だと、思い通りにならないことに対して自分を押さえきれなくなってしまう人が少なからずいるわけです。

また、自分ではあおり運転をしているつもりはないのに、普段の癖で先行車との車間距離を詰めて走ってしまう人もいます。

そういった人の場合には、逆に先行車に乗っている人を刺激してしまって急ブレーキを踏まれたりすることもあります。

もし、それでクルマ同士がぶつかったらどちらが悪くなるのでしょうか?

ここでは、あおり運転に関する問題点についてさまざまな観点から考えてみたいと思います。

あおり運転は立派な道路交通法違反であるということを認識すべし

あおり運転はただ単に危険であるというだけではなく、立派な道路交通法違反ということになります。

道路交通法の26条には以下のように車間距離の保持に関することが書かれています。

「第二六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。」

参考:道路交通法第二十六条~車間距離の保持

車間距離不保持による罰則は、一般道の場合だと反点数が1点で反則金が6000円(普通車の場合)となっています。

高速道路の場合だと、違反点数が2点で反則金が9000円(普通車の場合)となります。

明らかに危険を誘発するあおり運転に対する罰則としては、なんとなく軽すぎるように感じる人もいると思います。

あおり運転は違反この車間距離不保持の罰則というのは、あくまでも安全に走行するために必要な車間距離を確保しなかった人に対する罰則です。

「あおり運転」という悪意を持って危険を誘発させる運転に対する罰則ではないので、どうしても刑罰としては軽い印象を受けてしまいます。

現在のところ、あおり運転そのものを直接的に取り締まる法律がないために、便宜的に道路交通法26条の車間距離不保持を適用せざるを得ないことになっているわけです。

しかし、あおり運転によって相手を死傷させるような事故を起こしてしまった場合には、危険運転致死傷罪などの重罪が適用される可能性はあります。

危険運転致死傷罪が適用されると、最大で懲役20年の罰則を受けなければならなくなりますので、ほぼ人生が終わってしまうことになります。

参考:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

平成29年6月に東名高速道路であおり運転をされたあげく停車をさせられて、そこに大型トラックが追突して夫婦2人がなくなるという悲惨な事故が発生しました。

この事件では26歳の被告に対して危険運転致死傷罪が適用され、他の3件の事件と合わせて横浜地裁から懲役18年が言い渡されています。

また、平成30年7月に堺市で、前を走行するバイクに対してあおり運転をしたあげくに、追突をして死亡させてしまった事件では、1審2審ともに殺人罪を適用し、41歳の被告に対して懲役16年が言い渡されています。

あおり運転による事故で、殺人罪が適用されることもあるのです。

日頃からあおり運転を行っている人は、自分がしている行為で人生を棒に振るほどの重大な犯罪者になる可能性があるということを、肝に銘じてほしいものです。

参考:堺・あおり運転、二審も懲役16年 殺人罪を認定~朝日新聞

あおり運転に対する罰則が軽すぎるという問題点

あおり運転は、車間距離保持義務違反という立派な交通違反であることは間違いありませんが、その罰則に関しては非常に軽いというのが現状です。

先ほども紹介しましたように、車間距離保持義務違反の罰則は一般道で違反点数1点と反則金6000円です。

危険性の高い高速道路でのあおり運転であっても、反則金が9000円で違反点数2点です。

命の危険にさらされる可能性のあるあおり運転に対して、この罰則ではあまりにも軽すぎますし、犯罪に対する抑止力もそれほど期待できません。

そのため、警察庁ではあおり運転対策のために、道路交通法を改正する方針を固めたようです。

しかし、来年の通常国会へ改正案を提出することを目標としているために、しばらくの間はあおり運転を直接取り締まる法律がない状態が続くことになります。

苦肉の策として、車間距離保持義務違反だけではなく他のさまざまな法令を活用したりして、悪質なあおり運転をするドライバーの摘発をしているというのが現状です。

たとえば、相手のドライバーに心理的な恐怖を与えたという理由で、暴行罪を適用して摘発するケースもあります。

勘違いをしている人も多いと思いますが、暴行罪というのは相手に殴る蹴るなどの暴力をふるったときに限って適用されるわけではなく、恐怖を与えるだけでも適用が可能になります。

過去の判例では、脅すつもりで日本刀を振り回した行為や相手の手前に石を投げつけるといった行為で、相手の体には一切触れていないにもかかわらず暴行罪が適用されて有罪になっています。

また、並んで走っているクルマに対して嫌がらせのために幅寄せをしたケースでも、昭和50年4月に東京高裁が暴行罪の有罪判決を言い渡しています。

こういった過去の判例に照らし合わせて考えてみますと、悪質なあおり運転に対して暴行罪が適用されても何ら不思議はないことになります。

暴行罪が適用されることになれば、その罰則は車間距離保持義務違反にくらべてはるかに重く、刑法208条では「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」となっています。

参考:刑法208条~暴行

追突事故を起こしてしまった場合は後ろの車両が圧倒的に不利

あおり運転をしている本人は、アドレナリンが出まくっている状態のため、自分が立場的に不利な行為をしているということを冷静に考えることができないのでしょう。

しかし、あおり運転をしたあげくに事故を起こしてしまった場合、後方を走っているクルマの方が圧倒的に不利になってしまうのです。

いわゆる「おかまを掘る」という行為になりますから、基本的には100:0で後ろのクルマが悪いことになります。

ただし、車間距離を詰められたことに腹を立てた先行車が急ブレーキをかけたりして事故を誘発してしまった場合には、先行車にも過失があると判断されます。

しかし、そういった場合であっても、過失割合的には70:30で後ろのクルマが圧倒的に悪いことになってしまうのです。

そういった意味では、必要以上に車間距離を詰めてあおり運転をする人間というのは、「頭が悪い人」ということになるわけです。

もし先行車のドライバーが悪意を持った「賢い人」だった場合、フットブレーキを踏まずにサイドブレーキなどを使って減速して意図的に事故を誘発させてしまうこともできてしまいます。

その場合には、あおり運転をしていた後ろのクルマの過失割合が100:0となってしまう可能性があり、多額の賠償金を支払わされることにもなりかねません。

映画「男はつらいよ」にでてくる「とらやのおいちゃん」の名セリフじゃないですが、「バカだねぇ~」ということになってしまうわけです。

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あおり運転というのはずっと昔からありました

あおり運転に関する連日の報道から、最近になって急にあおり運転をする人が増えてきたように感じる人もいるかも知れません。

しかし、あおり運転というのはずっと昔から日常的に行われていたのです。

特に、大型トラックが乗用車の後方にピタリと張り付いて前のクルマに対してあおり運転をするという、非常に危険極まりない行為は、どこでも普通に目にすることができました。

実際に、そういった被害を過去に何度も受けた経験を持つドライバーも少なくないでしょう。

なぜ、最近になってあおり運転が注目されるようになったとのかといいますと、ドライブレコーダーが普及してその映像を誰でも動画サイトにアップできるようになったからです。

これまでは、あおり運転をされても証拠を残すことが困難でしたので、多くの場合は泣き寝入りをせざるを得ませんでした。

しかし、ドライブレコーダーが普及したことで、あおり運転の一部始終を証拠として動画に残すことが可能になりました。

その結果、自分の愚かな行為がしっかりと撮影されていることに気がつかない「頭の悪い人たち」が、どんどん摘発されるようになってきたわけです。

今頃になってあわてて法整備をしようという動きになっていますが、日常的にクルマを運転しているドライバーにしてみれば「何をいまさら」感があるわけです。

あおり運転対策には後方が映るドライブレコーダーが有効

あおり運転が問題になっていることもあり、ドライブレコーダーが飛ぶように売れているようです。

もちろん、そういったドライブレコーダーを購入する人の多くは、あおり運転をする側ではなく、あおり運転をされると困ると考える人たちです。

しかし、ドライブレコーダーというのは、基本的にクルマの前方を撮影する目的で設置されるものです。

前方ばかりを映しても、後方から車間距離を詰めてあおり運転をしてくる人の顔やクルマの映像を記録として残すことはできません。

あおり運転されたことを証拠として残すためには、後方にもドライブレコーダーを設置する必要が出てきます。

また、最近では一方向だけではなく、360度すべての状況を撮影することのできるドライブレコーダーなども登場してきていますので、あおり運転対策にはそういった商品を選ぶのが有効です。

ただし、360度対応のドライブレコーダーはまだ高価なものが多いようです。

かといって、前方と後方の2台のドライブレコーダーを設置するのも予算的に厳しいと感じる人もいることでしょう。

ステッカーそういった人の場合には、とりあえずAmazonなどで「ドライブレコーダー作動中」のステッカーを購入して後方に貼り付けておくだけでも、あおり運転に対する抑止効果にはなると思います。

リアのガラスはスモークになっているクルマがほとんどですから、実際にカメラが設置されているかどうかを後方のクルマが確認をするのは困難です。

そのため、ステッカーだけでも十分なあおり運転を防止する効果はあると考えていいでしょう。

知っておきたいあおり運転をされる側の問題点

あおり運転というのは非常に危険な行為ですから、絶対に許されるべき行為でないことは間違いありません。

しかし、実際にはあおり運転をされる側にも問題があるケースが非常に多いのです。

あおり運転の被害にあう人の多くは、いわゆる「空気を読めない運転」をする人で、何らかの理由で後続のクルマの琴線に触れてしまった可能性があるわけです。

たとえば、追い越し車線である高速道路の右側車線をずっと走り続けてしまったり、無理な割り込みをしたり、優先道路の流れを乱すような形で道路に侵入してしまったりするような行為です。

ドライバーというのは、他のクルマのせいで自分のクルマがブレーキを踏まなければならないような状況になることに不快感をおぼえます。

「コノヤロー!俺にブレーキを踏ませやがって!」と、怒りのスイッチがONになってしまうわけです。

自分が「空気の読めない運転」をしていないかどうか不安な人は、以下の記事で詳しく解説をしていますので、ご覧になってください。

関連記事:あおり運転を誘発してしまうような運転を無意識にしている人は要注意です

あおり運転をしていると勘違いされやすい人たちの運転の特徴

先に「あおり運転をする人は頭が悪い」と書かせていただきましたが、実は自分ではまったく意識していないにもかかわらず、結果的にそういった頭の悪い人たちと同じような運転をしてしまっている人も少なくないのです。

つまり、単なる運転の癖で前のクルマとの車間距離を詰めて走ってしまう人です。

あおり運転との違いは、悪意があるかないかという点だけです。

ある意味では、純粋な車間距離保持違反ということになります。

こういった人の場合、自分が車間距離を詰めすぎているという認識がほとんどないので、よけいに始末が悪いといえます。

もし前方を走っている人が悪意を持った「賢い人」だった場合、車間距離を詰めて走る癖のある人は「格好のカモ」にされてしまう可能性があります。

なぜ車間距離を詰めて走ってしまうのかは本人に聞いてみないと分かりませんが、単純に他のクルマに割り込まれるのが嫌で車間距離をあまり開けないように走る癖がついてしまっているのかも知れません。

また、ドライバーによって自分が快適に感じるスピードはそれぞれことなります。

前方を走っているクルマが、自分が快適と感じるスピードよりもゆっくりと走っている場合などに、「もう少しペースを上げてくれ」という思いから、無意識に車間距離を詰めてしまうこともあるでしょう。

いずれにしても、車間距離を詰めて走ることで得をすることは何もありませんから、そういった悪い運転の癖がついてしまっている人は、意識的に車間距離を空けて走るように日頃から心がけるようにした方がいいでしょう。

前を走っているクルマがあおり運転をされていると勘違いして、逆上したあげくに急ブレーキを踏まれたとしても、追突をしてしまったら後ろのクルマが70:30で悪いことになってしまうのです。

くれぐれもご用心を!

文・山沢 達也

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